詩の原野

いろんな人の詩心の原野に迷いこみたい

名工💎橋本多佳子

落葉松に青

入りゆくや落葉松未知の青籠めて 橋本多佳子 (いりゆくやからまつみちのあおこめて) 落葉松(からまつ)の道を入って往く影ありそこは近づく人など滅多にいなかった林の筈男は落葉松の一本一本を確かめるように歩くそして寂しい・寂しいと口遊んでいるよう…

花しどみ

花しどみ老いしにあらず曇るなり 橋本多佳子 (はなしどみ おいしにあらずくもるなり) 第五句集・遺句集「命終」の冒頭句。この句集には昭和三十一年五月から昭和三十八年三月までの凡そ七年間に詠まれた句が載せられているようです。花しどみを知らない私…

一処一情

ご遺族が折角出してくださった「橋本多佳子全句集」なのに殆んど読めないままに済ませては勿体ない。多佳子の師・山口誓子の解説を読み、小池昌代氏のエッセイに目をとおし、橋本多佳子の句・句誌への想いにも触れることができた。そう思っても精力と生涯を…

多佳子の座

あぢさゐの夕焼天にうつりたる 橋本多佳子 (あじさいの ゆやけたかくに うつりたる) 「夕焼天」をどう読もうか迷ったが、今もまだ迷っている気持ちがある。これは小池昌代氏の読みかたを知りたいと思うも、氏の都合はある筈だし・やっぱり自分なりの理解で…

剣豪修業の海彦時代かも

橋本多佳子の句集『海彦』から二句を読ませていただきます。この「海彦」には多佳子56歳頃から61歳頃に詠まれた句が並んでいる。初版「海燕」の句が41歳頃までの10年ほどに詠まれたようで、30歳前後で本格的に俳句と取組んだことになりそうだ。 図書館から借…

ある時は教師妻

人の多くは様々な容(かたち)の衣裳に身を包む。TPOに合わせて好みの衣裳に着替えもする。他者を見るときは好みの衣裳を見たくなり・己もまた好みの衣裳にやつしてみせる。見られる側も見る側も時・所・状況に合わせて好みの衣裳を身に纏(まと)う。じっさい私…

久女のため

つぎつぎに菜殻火燃ゆる久女のため 橋本多佳子 (つぎつぎにながらびもゆるひさじょのため) 多佳子が個人名を挙げて詠んだ句を私は他に知らない。それほど多佳子にとっての杉田久女は重い存在だったと感じる。平凡な愛を大切に過ごしたかっただろう久女。そ…

万緑やわが額にある

万緑やわが額にある鉄格子 (読み方:ばんりょくやわがぬかにあるてつごうし) 世間に流れているフレーズ「他人の不幸は蜜の味」を思いだして検索、前向きな意見に出合えて幸いでした。橋本多佳子も私と変わらない感覚だってことはこの俳句に顕われている。…

乳母車夏の

乳母車夏の怒涛によこむきに 橋本多佳子 橋本多佳子を知ることが出来たのは「近代俳人」に載った上野さち子氏の短い記事のお陰。そのときの何気なしに読んだ短い文章までは憶えていないが、その文がなければ私が多佳子に惹かれることは無かっただろうし、以…

狐啼く夜

母と子のトランプ狐啼く夜なり 橋本多佳子 みんなもご存知でしょう? 参加者全員でカードを分け合って、そのなかにババ(=ジョーカー)が入ってるの。ババはペアを組めないから場に晒(さら)すことが出来ず、それなら最後まで持っててドン尻になるか、あるいは…

雪の日の浴

(当面は大好きな俳句に寄せる私の想いを載せてまいります) 雪の日の浴身一指一趾愛し 橋本多佳子 雪の日の浴に、穢されてならない身と心と雪とが一つに重なった気がいたします。身一指一趾・・・身体もですが、手足の指や踝(くるぶし)の隅々まで丁寧に浄め、同…

ごあいさつ

ブログを再開致します。当面は「詩」について考えてまいりたいと思っております。よろしくお願いいたします。<(_ _)>